酒づくりの言葉・酒蔵ごよみ――「土用洗い」 | こめから.jp | お米のチカラで豊かに、上質に。

酒蔵だより

SAKAGURA

2018.8.2.

酒づくりの言葉・酒蔵ごよみ――「土用洗い」

梅雨明けから立秋前、北陸特有の蒸し暑さの中、今年も福光屋では土用洗いが行われました。蔵人総出で酒蔵内の手桶、半切り桶、櫂棒や梯子などの木製道具を屋外に集め、丁寧に手洗いし、天日で干した後に柿渋を塗る土用洗い。かつて、福光屋の酒造りが季節雇用の杜氏や蔵人らを中心に行われていた1990年以前は、7月に行われる「初呑み切り」に合わせて漁村・農村にある自宅から蔵人たちが酒蔵に戻り、それにあわせて土用洗いも行われていました。「先々代の杜氏・大浦のおやっさんの時代も、初呑み切りの後が土用洗いと決まっていました。炎天下の中で水飛沫をかぶりながら、熟練の蔵人から若手まで和気藹々とした雰囲気でこの大仕事に取り組みました。土用洗いを終えると、おやっさんにサザエ狩りなどの磯遊びに連れて行ってもらうのが恒例でした」と、板谷和彦杜氏。土用洗いは、駆け出しの蔵人にとっては杜氏や蔵人三役に直接声をかけてもらいながら、道具の扱いを通じて酒造りの姿勢を和やかに学ぶ場であったといいます。
柿渋は木製品の防腐に役立ち、強度を高め、手馴染みをよくする効果があります。先人の知恵や道具の手直しを先輩から教わり、若手はそれらを抜かりなく的確にこなせることが酒造りの第一歩であること、道具を丁寧に大切に扱うことが酒造りの基本であることを習得するのです。新たな柿渋が施されて黒々と光る木桶は、そのような蔵人らの気構えを幾重にも宿して秋からの出番を待っています。