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2019.11.7.

世界的フロマジェ、ファビアン・デグレ氏による「福光屋の日本酒✕フランスチーズ」のペアリング。

去る2019年10月29日、世界から注目を集めるフロマジェ、ファビアン・デクレ氏をゲスト講師に招いた、日本酒とチーズのペアリングセミナー/ディナーが金沢で開催されました。ファビアン氏はフランスで開催される世界的なチーズコンテスト「Mondial du fromage2015」において若干31歳で最優秀賞に輝き、フランス国内外で活躍する気鋭のフロマジェ(チーズのプロフェッショナル)。ファビアン氏にとって、日本酒の蔵元とチーズのペアリングイベントに取り組むのは初めてのことですが、日本の輸入チーズ専門店で約10年勤務する間に日本の食文化に親しみ、ソムリエ・田崎真也氏の手引きで日本酒の面白さ、奥の深さを知り得ていたといいます。そんなファビアン氏が福光屋の日本酒と出会ったのは、「ドミニク・ブシェ」パリ本店。ドミニクシェフから紹介を受け、現地で専務の福光太一郎と意気投合したことがきっかけとなり、今回のイベントが実現しました。

今回、ファビアン氏が福光屋のお酒に合わせるためにセレクトしたチーズは全5種。白カビタイプからウォッシュ、青カビタイプまで、いずれもAOP(EUが定める原産地名称保護制度)の認証を受け、一部はフランスにわずか3〜4軒しかない伝統的製法を守る生産者が作った稀少なチーズです。一方のお酒は、ファビアン氏とともに今回のペアリングをリードしたシニアソムリエの辻健一氏と福光屋・専務の福光がセレクトした純米酒4種。興味深いことに吟醸系は含まれず、お米の旨味がしっかりと表れた純米酒のみがラインナップされました。「ときにはワインを凌ぐ、素晴らしいマッチングを示す」というチーズと日本酒のペアリング。そのポイントをご紹介します。

禱と稔フクノハナ2015酒造年度 ✕ ブリア・サヴァラン(白カビフレッシュタイプ)

福光屋初の有機純米酒シリーズ「禱と稔」から、有機栽培米フクノハナを100%使った純米酒と非常にクリーミーでバターのようなテクスチャと濃厚な味わいのブリア・サヴァラン。チーズの香りと旨味の余韻が長く、それをボリューム感のあるたっぷりとした味わいのお酒が受け止めます。チーズのコクとお酒のコクがよく同調して膨らむ印象。

 

ITAYA RICE WINE for RED FOODS ✕ エポワス(ウォッシュタイプ)

日本酒にはなかなか出せなかった“酸”を際立たせ、フレンチやイタリアンとの相性が格別によい「ITAYA」シリーズから、赤身の魚や肉、チーズとのペアリングをターゲットに造られたRICE WINE for RED FOODSと日本でもウオッシュチーズの代表格として人気の高いエポワス。チーズの強い香りをお酒が包み、口の中でやわらかく調和。チーズの酸味とお酒の酸をマッチさせ、フィニッシュの切れのよさを楽しむペアリング。

 

加賀鳶 山廃純米 超辛口 ✕ ラングル(ウォッシュタイプ)

福光屋の代表銘柄「加賀鳶」から伝統の山廃酒母で仕込んだ超辛口の純米酒と、鼻に抜ける香りのよさとクリーミーさ、独特の酸味が特長のラングル。山廃酒母による乳酸の酸味とチーズの酸味が絶妙に調和します。チーズの口溶けのよさ、超辛口キレのよさがまとまり、口内を洗い流すような効果、お酒にあるミネラル感がチーズのクリーミーさをさっと切っていく効果も。

 

黒帯 堂々 山廃純米 ✕ ブルー ド ラカイユ(青カビタイプ)

酒米や精米歩合の異なる純米酒をそれぞれ熟成させてブレンドした「黒帯」シリーズから、山廃仕込みならではの複雑な香りと旨味を楽しめる“堂々”とブルードラカイユ。独自の自社カビを守り育てるこだわりの作り手による青カビチーズで、特有の風味と余韻を楽しめます。山廃仕込みの純米酒をさらに約2年熟成させたことによる“堂々”の体格のよさ、ゆったりとした深みがブルーチーズの強い個性、刺激的な味わいを包み込み、まろやかにさせるペアリングです。

 

※その他、ファビアン氏がこのセミナーのために選りすぐったコンテ(ハードタイプ)のテイスティング、辻さんが日本酒とワインを比較するためにセレクトしたオーストラリア産のサヴァニャンも登場しました。

辻氏によるペアリングのポイントは、チーズもお酒も冷やしすぎないよう温度をできるだけ合わせ、それぞれのアロマを十分に開かせること。旨味(アミノ酸)または酸を同調させて余韻の長さを引き出すことで多様な味わいを楽しむことができる。たっぷりとしたワイングラスを使うと、チーズと日本酒のそれぞれの香りが引き立ち、味わいに奥行きが出るとアドバイス。

ファビアン氏によるペアリングのポイントは、余韻の長いチーズはしっかりと丁寧に作られた良質なチーズの証拠であり、そういった質の高いチーズをまずは選ぶこと。当然、日本酒も旨味とボディのあるしっかりした造りのお酒、とくに山廃・生もと系がおすすめ。チーズの温度が低いと塩気を強く感じ、口当たりが悪くなるため気をつけること。チーズの外側から内側まで、部位によっての香りや味、食感の違いにも気を配るとよいとアドバイス。もっと気軽に考えれば、ワインより合う合わないの差が少ないため、日本酒とチーズのそれぞれが美味しければ、ペアリングはおおよそ上手くいくとか。
「チーズは生き物ですから、昨日と今日では少し違った印象になります。毎回新しい経験ができ、その度に小さな幸せがある。そんな風に楽しんでいただきたい。そして日本の皆さまにもっとチーズに親しんで欲しいですね」。

 

続いて「LE GRILLドミニク・ブシェ KANAZAWA」で開かれた日本酒とチーズを楽しむペアリングディナーでは、ファビアン氏のセレクトしたチーズとそれらを使った6種の特別料理が披露され、この秋発売された「玉葉 南殿の橘」や「金沢美人 純米吟醸 あまくち」も登場。料理に応じて姿や温度を変えたチーズが、他の食材と調和しながら、日本酒とどうマッチするか。幅を広げた多様な味わいを存分に堪能できた贅沢なひとときでした。

フランスと日本、連綿と続く独自の食文化の真っ只中にあるチーズと日本酒。それぞれ上質の自然の恵みを原料とし、各々の気候風土に育まれ、伝統的な技法を受け継いで今に続く、まさにクラフトマンシップの結晶でもあります。ペアリングによる香りや味わいにとどまらず、チーズと日本酒の成り立ちがいかに多くの共通要素で結ばれているか――そんな背景にまで思いを巡らせることができる学びの場となりました。

ファビアン・デグレ Fabien DEGOULET

1984年フランス ル・マン生まれ。実家は祖父の代から続くチーズ販売業。2008年パリのINALCO卒業後、来日。株式会社フェルミエに入社し、渋谷店店長や愛宕店店長、商品開発を務める。2018年春からは本国にてフロマジェとして活動。フリーランスとして、フランスと世界中にチーズのプロモーションを精力的に行ってる。
◎2012年フランスチーズ鑑評騎士の会 シュヴァリエ
◎2015年モンディアル・デュ・フロマージュ 世界最優秀フロマジェ
◎2016年ギルド・デ・フロマジェ協会 メートル・フロマジェ
◎2017年ピコドン騎士の会 シュヴァリエ
https://www.fabiendegoulet.com