酒炭酸物語 日本のスパークリング

開発秘話

1. 老舗酒蔵が造る日本酒の新スタイルとは

 ハイボールや低アルコールリキュールの販売が好調といわれる中、福光屋はすべての酒を米と水のみで醸す純米蔵として日本酒の新しい味わいやスタイルをご提案しようと、低アルコール日本酒や発泡性の日本酒、長期熟成酒を炭酸水で割るソフト面の研究開発を進めてきました。以前から直営店であるサケショップ福光屋に多く寄せられていた発泡性商品を要望されるお客様の声も受け、私の研究開発が始まったのです。

株式会社福光屋 研究開発部/主任研究員 上松 昇

2.600タンクの中から厳選

低アルコールでも味と香りのバランスを崩さず、しかも料理にきちんと合う軽やかな飲み口。この実現のために、 600あるタンクのうち最も相応しい酒はどれなのか、ブレンド比率はどうあるべきか、気の遠くなるような試行錯誤を繰り返しました。「水っぽい」「もっとコクが欲しい」「酸味が強い」「舌にアタックが必要ではないか」「香りが足りない」、何度も唎酒をかさねる中で、ものづくりに厳しいスタッフから難題を与えられました。それは、福光屋の職人魂と言えるものなのかもしれません。

3. アルコール6度と風味の両立

研究開始から2年。厳選した酒から、ようやく3種の誕生にこぎ着けたのです。これは、福光屋がアルコール6度での味わい開発技術を構築した、初の商品となりました。2010年12月に直営店でのテスト販売をスタート。お客様からの反応にスタッフ一同、緊張の面持ちでした。自信と不安が入り交じる中、店頭やSNSでは多くの好評価をいただき、年が明ける前に2回目の充填を急ピッチで進めることとなったのです。その後もクチコミやメディアでの紹介により、徐々に認知度も高まってきました。飲食店や酒販店などからもお声がかかり、市場への本格投入が決まったのです。「美味しい」と言っていただけること、これこそ開発者冥利に尽きますね。

4. 「酒炭酸」という名の新ジャンル

実は私、学生時代はビールばかりで日本酒は苦手でした。しかし、大学で微生物や酵母の研究をしていたことが、日本酒業界に入るきっかけとなったのです。福光屋は全国でも珍しく研究開発部門をもつ老舗酒蔵。酒造りの基本を学んだ後は、研究に打ち込めるのだろうと考えていました。けれど、配属されたのは全国の酒屋を巡る営業本部。ベテランを相手に知識不足を痛感させられる苦しい時代でしたが、今こうやって顧客視点に立った研究開発ができるのは、この経験のおかげだと思っています。「酒炭酸」が近い将来、ビール愛好家やハイボールファンからも愛される「ニッポンのソウルドリンク」になることを願っています。

5. 伝統技術を進化させる

これまで日本酒だけでなく、アルコール分0.5%未満の吟醸酒風味のアミノ酸飲料や米醗酵食品、自然派化粧品の原料開発にも取り組みました。福光屋は酒蔵ですが、現在は酒造技術を核とした総合醗酵会社と言えます。 原料である米にも深いこだわりがあります。私はその品質チェックも担当していますが、生産農家の方の顔が見えるということは、何よりも励みであり、ものづくりにおける利点だと考えています。 新たな製品や医療分野に貢献するために、これからも先端の裏づけを得ながら福光屋の米醗酵技術を日々進化させてきたいと思っています。